Aさんとの作品制作の記述8

Aさんとの作品制作の記述8

2025/12/04

 Aさんと二回目の話をした。3/5に彫る約束をした。ここまで、どのような流れがあったのかを振り返りながら、次はどうしたらもっと良くなるかを考えてみる。

 まず、10/16に初めてお会いした。そこでどのような作品がつくりたいのかという話をよく聞いた。

 次は、このはじめの話し合いの時点で、「図案(平面のイメージ)をつくって、それをいれずみとして実現しようとする」という意識のあり方についてと、「いれずみを彫るということを通して、新しい形を生成する」という意識のあり方についてを伝えて、話すといいと思った。

 「図案(平面のイメージ)をつくって、それをいれずみで実現しようとする」の方の、「しようとする」という言葉の含みは、現実には平面でイメージしたことといれずみでは性質が大きく違うので、図案がそこまで機能しない。つまり、「実現する」と言い切れなさがある。

 ここは、Uさんの資料が役立った。

図案が機能しなくなった時、そのまま続けるのか、現実に応答して変化させるのかは彫る人の選択に委ねられているが、変化させるのなら「いれずみを彫るということを通して、新しい形を生成する」というあり方へ移行することを意味する。

 イメージが先にあって、それを実現しようとした時、身体という現実の応答が理想的なイメージとのずれを生む。それに応答し続けていく。不確定性や無秩序な断片たちの堆積によって構成された外殻層の内側から芽吹いてきたものが調和をもたらす。

 その時芽吹いてきたものは、今はまだここでイメージすることができない「新しい形」である。

 擬似的に再現するのに、「花の形を描く」(過去の経験から描く)「花の形が生成される」(現在の連続が描く)をスケッチで表した。

 二回目の話し合いでは、「新しい形を生成する」あり方ではじめることの合意をつくって、それまでに描いておいた平面のイメージとしての紙へのスケッチを、身体へペンで描いた。

 描いてみると、もう一要素加える必要を感じたり、構成をどうしたらいいのかわからない部分があったりした。それらの不確定さや無秩序をイメージの力で完全に支配することを目指すのではなく、それは現実に彫り、治癒し、現れるいれずみによって差し向けられる感覚に応答し続けた線の先で立ち現れてくるものだろうということで、完成のイメージを成立させないまま彫るという行為を連続させることになった。

 完成のイメージを彫る前に成立させないということは、イメージの力を使わない=構成をしないということではない。はじめる前に「完成」までの理想的なイメージを描き、安心が成立したように錯覚するのではなく、彫って治癒させるという現実が差し向けてくる応答に対してその都度イメージの力を使い再構成し続ける。一つのイメージに依存しないということ。

 そのようなあり方は、「理想的なイメージ」をまず描き、その目的地への最短ルートを逆算し、計画を効率的に進めていくようなあり方の時間感覚と根本的に異なっている。

 その場に対してその都度イメージの力を全力で駆動させ構成し、崩れ、再構成するということを繰り返す。時には立ち止まって、ただまつ。寝かせてみる。彫りたいと思えたら彫ること、彫りたいと思えない時は彫らないということが大切になる。そのような作品づくりは、短期間で集中して、効率的に「完成」を目指すものではなくなる。長い時間感覚の中での、遠いところで会う約束