いれずみを彫るということの中で最も重要なことの一つ、「身体に描く」ということを考える。
Aさんとの作品制作の記述5までの、「形態Aが機能しない」の話が、身体に描くということの中でどうしたらできるだろうか。
絵画であれば平面性の中で考えていくことができるけど、いれずみの場合は身体という三次元のもので考えないといけないので、平面性に頼ることはできない。
まず、身体から一本の線を取り出すということはできる。これは形を成立させるということなのだが、特定の要素の連関体系に依存しない、身体から「生成された形」であり、その形との関係でもって身体を要素に還元する性質を持つ形(線)なのだと思う。
そのような「生成された形」から、さらにもう一本の線を取り出すことで「生成された形」と、「身体」から生成された形として、連続させていくことができる。 この連関も、特定の体系に依存しない関係にあると思われる。
そのようにして続けていけば、身体に無数の線を描くことができるが、それだけの場合「線の抽象表現」になる。その「線」の洗練次第では形態が機能しないということを立ち上げることができるが、今回は「カラス」を彫りたいという彫る人本人さんの希望があり、「カラス」というインデックスを扱わなければならない。
身体から線を生成して作品化させる時、どのような構成が「より生成された形」かということが重要だと思う。
身体から線を生成して描くという時、厳密に言えばそれは生成されたイメージだと思う。それは作家の身体感覚との関係が深いものだろうか。
イメージを実現させる時、現実とのズレが生まれる。極端に現実に即反応するように、つまり点を連続させると、イコンにまで還元されてしまう。
作品の細部がイコン化することは問題ではない。身体にも細部をごく近距離で観察するとこれ以上差異を認識できないというところがある。その先はイコンである。そして「皮膚の質感」「シワ」「爪」「指」「手」「前腕」「腕」のように、段階的にインデックスのスケールが拡張していく。
問題なのは作品の細部がイコン化してしまうことではなく、身体のインデックスのスケールに合わせることなのだと思う。
「生成された線」というのは、身体として生成された「前腕」「腕」のようなインデックスに斜線を引く関係の線なのだと思う。対象に斜線を引くということは対象が認識できていないとできない。対象に斜線を引くことで対象がより意識される。対象に斜線を引いているものとして、線も同等に意識される。
思いつきなのだけど、「点」を身体が生成したインデックスに斜線を引かない位置に複数配置して、その点と点を身体が生成したインデックスに斜線を引く線で結ぶというのはどうだろう。

つまり、身体が生成したインデックスと別のインデックスの境界線の交点に点を描く。


これで、身体が生成したインデックスとそれに対する斜線というインデックスを切り分けずに混合されたような線にならないだろうか。
この次は身体が生成したインデックスの境界線をなぞる様な線で点を繋ぐ。要するに、筋肉の形のような線だ。


すごくいい!!
今まで直感的にイメージしてやっていたことが、直感に頼らずに言語化する中から発生させることができた!
しかも、直感だけでやるとどうしても手首から下に部分と肩の部分の構成がうまくいかないことが多かったけど、今回はそこがとてもうまくいっている。
この線としての形態も機能していない。
身体が生成したインデックス(I1)群の境界線の交点に点を描き、まず個別のI1に、 斜線を引く/補色関係の/手触り/関係する ような線(以下、関係線)を描き、次に、同様にI1群の境界線の交点から交点へと、個別のI1を、指し示す/境界線自体/まなざす ような線(以下、境界線)を連続させ、接続させる。
ということをなぜ思いついたのか。これを思いついたということはどういうことだったのか。これ自体、どういうものなのか。ということはまた補完して考えたい。
さて、今描けた関係線と境界線の混合線は形態が機能していない素晴らしいものができたのだけど、すぐに拡張していくので機能はしないけど、それでも契機となる混合線との関係で要素に還元される身体のインデックスのスケールは「腕」程度だろう。
すぐに拡張していくので機能はしないが、契機となるインデックスのスケール、というのも面白い。ここもまた補完して考える。
では次に、「上腕」「前腕」という風に、I1のスケールを下げて混合線を連続させてみる。その際、先ほどの混合線と交点を共有してもいいし、別で始めてもいいが、どうするか、、、。思いつきだが、別でやってみるか。

このように、先ほどは「腕」というスケールの中で交点が三つだったのが、今度は「肩」というスケールの中で交点が三つになっている。

解剖学的に言えば、僧帽筋付近の交点と三角筋付近の交点を、上部を関係線で結び、

下部を境界線で結ぶ。すごくいい!前腕もやってみる。すでに予感しているのは、おそらくここからリズムという要素が加わりそうだということ。リズムの操作を今後していくことになりそうだ。

これもすごくいい!!
ではどんどん次へと、前腕以下のスケールへとさらに進めて行きたいのだが、それを言葉にしようとすると、「筋肉の凹凸」のように、言葉で捉えづらい。つまり、これ以下のスケールで行うのは難しくなってくる。
「指」のように、言葉になっているものでこれより小さいスケールがある身体の部位であればできるのだろうが、現在の作業では細密な操作ができないのでやはり難しい。
「腕」のように、「前腕」よりもスケールを大きくしようとすると、下部の境界線は描けるが、上部の関係線は身体の輪郭線と一致するので、描けなくなる。
ここから先は手探りだ。ひとまず、頭の上から肩までの輪郭を境界線、肩から前腕までを境界線で繋いでみる。直感的な違和感は避けつつやってみる。

ちょっと精度が悪い線となったけど、いい感じ。

側面はとてもいい!!
「腕」という、「上腕」よりも大きい単位の中で行ったことで、上部の関係線が輪郭線と一致していて、側面からみると消えてなくなっている、、、
いや、間違えている!
まず、初めに(2025/12/04−4、−5)で描いた線が、「腕」のスケールの混合線だった!ので、それを忘れていて再び「腕」のスケールで線を追加しようとした時に、頭の上までを対象とするところまでズレてしまっている。
さらに、上部を関係線、下部を境界線としていたのに、(おそらくズレたことで混乱して)下部を関係線として出してしまった。なるほど。それで精度が悪くなったのか、、、。
まあ、差し当たりここでの成果はこれぐらいにしておこう。とてもいい成果だった!
ここからは思い切って思いついたことをやってみる。
「上腕」のスケールの混合線で、既に描いた混合線と交差するように描いたらどうなるんだろう。そもそもその線はどういうものなんだろう。
関係線は、I1の関係線ということだった。ではI1の関係線に対して関係するということは、どういうことなんだろう。うーんなんか、捉え方がうまくいかない気がする。
既にある混合線と交差するように描く、のではなく、やはりI1に対して関係する線として交差してもいいので増やす、という捉え方でやってみる。
関係線はI1のイメージ。それに対してさらに関係線を足すということは、イメージのイメージを生成するということになるか。それがうまくいかなさそう。なぜかはまた考えたい。
そもそもやはり、関係線はイメージだが、境界線は指し示し/象徴的的な側面が強い。それらが混ざっている混合線はどういうものなんだろうか。それも併せて考えたい。
あーなるほど。I1の関係線に対して混合線を連続させるということは、下部が一致するということか。連続させる混合線の下部は境界線であって、その時の対象は身体ではなく線で、線の境界は線と一致するわけか。それなら違和感がなさそうだ。それでやってみよう。

I1に対する混合線(以下I a)に対する混合線(以下I a2)は、上部は関係線なのでI aに斜線を引くように関係し、下部は境界線なので一致する。
先の尖った楕円型のような図像が出てきた。
混合線I aは、関係線だけでもI aと表したいので、被ってしまっている。関係線は単にI aとして、混合線は「混合線I a」「混合線I a2」「混合線I a3」としよう。というか、混合線はインデックスの関係線が含まれていることを含意しているので、Iをつけなくてもいいか。それで言ったら関係線もインデックスの関係線か。
じゃあ単に、上腕の関係線A1、A2、A3、、、混合線A1、、、でいいか。
重要なのは、身体が生成したインデックスがI1で、関係線や混合線という、イメージを介して生成されたインデックスがI Aであることか。
うーん、記号を使わないと、身体が生成したインデックスからイメージを介して生成されたインデックスから生成されたインデックス。となってしまう。記号を使えばそれは「混合線I a2」ですむ。でもI aと混合線はほとんど同じ意味なんだよな。
「Ia(混合)2」がしっくりくるか。
または、「I a(関係)3」など。
「上腕」などは、「I1」。「I a(混合)1」や「I a(関係)3」などは「I A」。
インデックス1=身体など
インデックスA=作品
今日は色々成果が多かった!!
